ÇHOMEブログ日本の医療制度を名実ともに世界一にするために~新設医科大学構想にもの申す~《第1回》

日本の医療制度を名実ともに世界一にするために~新設医科大学構想にもの申す~《第1回》

~はじめに~
私は現在、医学部や難関大学の受験を専門としているある塾から依頼され、私の事務所にあるホールを教室にして月に1回という形で特別講義を受け持っています。

私の講義では、私の医師としての活動はもとより、海外での医療の経験や視察、衆議院議員時代に取り組んできたこと等を通して、学生たちには一専門分野に埋没することなく広範な視野を持ち、日本の医療界を牽引して行けるような人材に育ってほしいとの想いから、一人ひとりに真剣に向き合っています。そして、私自身にも初心に立ち返らせていただくよい機会になっています。

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塾での講義や塾のコラムへの投稿では、学生向けに新設医科大学(以下、新設医大)の問題に関して触れる機会がありましたが、これは今後の我が国における医療過疎や医師の偏在等に起因する医療崩壊の問題をいかに解決していくか、医療の将来展望にとってそのあり方は極めて重要な部分でもあります。

そこで今号からは、今後の日本の医療政策における新設医大のあり方について何回かに分けて論じて参りたいと思います。

■ 医師である私が政治を志した理由
ここで、そもそも私が医師でありながら政治の道を志した理由を述べさせていただきます。私はアメリカのボルチモアにあるジョンズ・ホプキンス大学のフェローをしていた時に、日米の医療の違いや日本の医療の素晴らしさと医師をはじめとした医療従事者の献身的な働き、そして誤った医療政策・医療行政によって引き起こされた人災でもあった医療崩壊を目の当たりにしました。そのことから医療崩壊をくいとめ、本来世界一である日本の医療をそして社会保障を守りたい一心から衆議院選挙に挑戦いたしました。お陰様にて当選を果たすことができ、1期務めさせて頂きました。

しかしながら医師としての本分を忘れてしまったわけではなく、現在も名古屋大学、慶応義塾大学、昭和大学、愛知学院大学、愛知医科大学等で講師や客員教授を務め、また名古屋医療センター、名鉄病院、名古屋市休日急病診療所等で診療にあたっています。

■ 日本の医療は欧米よりも劣っている?
さて日本の医療に目を転じてみましょう。医療財政難、過疎地の医師不足、各科の医師の偏在、医療従事者の過重労働、ワクチン行政のガラパゴス化、ドラッグ・デバイスラグ、医療過誤への対処等解決しなければならない問題は数多くあります。これらを改善する為には医療制度の変更は必要不可欠です。しかし、日本の医療の諸問題は、日本の医療が他国に比べて劣っている為に起きているのでしょうか?いえ、寧ろ日本の医療は質が高く安価で、医師の技術に関して言えば世界随一です。それにも関わらず、日本の医療が崩壊の危機に瀕し、国民が医療に対して不信や不安を抱いているのはなぜでしょうか?

医療と政治は密接不可分の関係にあります。国民の生命と健康を守り、医療への信頼を取り戻す鍵は政治と行政が握っています。そして、日本の医療政策は今まさに岐路に立っています。

以前からそして現在も、事実を知らない政治家やジャーナリストが知ったかぶりをして、“米国をはじめとした欧米の医療は素晴らしく、日本の医療は遅れている。”等と発言をします。果たして本当にそうでしょうか?実際に小泉政権時代には小泉純一郎が掲げた「聖域なき構造改革」の中でも“日本の医療は費用が高くて質が低い”との認識のもと、“少子高齢化による医療費増大を抑制する必要がある。”と主張し、医療費抑制政策を打ち出し、地方をはじめとした医療崩壊の端緒となったのは記憶に新しいと思います。

しかしながら、事実は世界保健機関(WHO)が加盟191カ国の保健医療システムについて比較した結果、総合評価では、日本の医療が世界で一位であり、経済協力開発機構(OECD)の調査では、国内総生産(GDP)に対する総医療費の比率は、日本は先進国の中で最も低い、という結果が得られています。つまり世界的に見れば“日本の医療は費用が安くて質が高い”と評価されているのが分かります。

実際、胃がんの五年生存率は、日本は70%とその成績は際立っており(英
国33%、オランダ47%)、手術死亡率は0.8%(同英国13%、オランダ10%)と他国の追随を許しません。米国と大腸がんの成績を比較しても、五年生存率は日本71.4%、米国47.5%と圧倒しています。

もっと身近な例をあげると、私の勤務していた米国のJohns Hopkins大学の救急外来に腹痛で受診した患者さんは、特定看護師(特定の医療行為をすることが許される看護師)の診察を受け、腹部X線検査を行った後に投薬を受けて帰宅しましたが、窓口で2000ドル(約20万円)請求されました。日本であればせいぜい1000円ぐらいの自己負担で済む内容ですが、この救急外来受診の保険適応に関しては保険会社とのタフな交渉が必要だったというオチまでついていました。ちなみに日本は皆保険制度があり、一部の例外を除き誰でも保険を保持していますが、米国は約3億2千万の人口のうち、約5千万人が無保険者で、これは中産階級も例外でなく、家族にがん患者が発生すると破産するという現実があります。

多くの有識者が国家政策としての米国の医療は失敗した医療政策の典型で
あると認識しています。皆さんは日本の医療をこのようなモノにしたいでし
ょうか?今また安倍政権がかつての小泉政権と同様に過度な医療費圧縮政策
に向いているのは大変心配です。

~次号に向けて~
日本の医療にも民主党政権時代にようやく欧米並みになってきたワクチン政策の遅れや医師の偏在、各科の偏在、医薬品医療機器産業の現状など多くの課題があります。また人口当たりの医師数もかなり不足しています。次稿では、日本の医師数や医療従事者と患者にとっての外来診療の環境から今俎上に上っている新設医大についてお話したいと思います。

(次号に続く)

吉田統彦拝

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